レトロモダンや、ネオクラシック。
昨今の車やバイクでは、先鋭的・近未来的なデザインがウケるのと同様に、過去を顧みたジャンルもウケが良い。

しかし、「モダン」や「ネオ」という修飾がなければどうなる?

結局は流行やファッションといった、カッコよさという潮の流れを漂うボートに同じだ。
古いものから光るピースを見つけて現代的解釈でアレンジしましたと取り繕う。

本当のレトロとはこれだ。このことだ。
否が応でも時の流れを感じさせ、古さの中の本質的ではなく、古いことこそ本質なのだ。

上下2戸という、いささか文化と呼ぶには疑問が残るものではあるが、これが純和風文化である。

文化住宅は、生来の和である長屋からの脱却を目指すものであった。
西洋的な一つの理想であった。

本物件も、当時他の文化から脱却するための「レトロモダン」を目指したのであろうか。
それが今や、貴重な純和風文化ともいえる存在となっている。
建っては取り壊される建物群の中で本当の時を刻み続ける。

何を思ってそこに立つのか。
1階部分は死んでいるものの、2階部分には人が住んでいる様子がうかがえる。
まだまだこの文化は時を刻む。