奥の階段。

写真にちらりと写り込んでいるのみである。

奥の階段まで行って、登ってみたい。
どんな音がするのか、奥から通りを眺めた景色はどんなものなのだろうか。
建物の全容が知りたい。

しかし、文化と付き合いたいがため、住人の平穏を乱すことはできない。
文化住宅に住むのはほとんどが70代の高齢であり、単独で住んでいることも多い。
敷地内に若者が入ること自体珍しく、不審者ではないかと警戒されてしまう。

文化の住人の高齢化は深刻な問題である。
リノベーションした和モダンな住宅が流行したことから、筆者は若者に文化が流行るのではないかと考えたこともあった。

しかし、現実は違った。
文化住宅は躯体も弱っており、防音性や防寒性が皆無であることも多い。
写真の文化のように一階部分に料理店が店子として入っていることもある。

快適ではないのだ。
(かくいう筆者も、若者の部類に入るが文化に住んではいないことを付言しておく。)

よって、文化には若者が寄り付かない。
文化に住んでいる若者はいるが、いたとしても和モダンが好きな若者とはかけ離れた人種だ。
(筆者の独断と偏見で申し訳ない。)

文化に若者があふれることはこれからもないだろうし、私が奥階段まで行き、平穏を乱さずに文化の景色を見ることもかなわないことだろう。

悲しいことであるが、私は文化を目に焼き付けるため、残すためへたくそなシャッターを切るのであった。